640万円の節税!離れでも同居である。特定居住用宅地等の小規模宅地の特例を活用した事例(インターネット検索に強い相続税専門の大手税理士法人では小規模宅地の特例は使えないと言われてしまった…)
基本情報
被相続人 | 父(母は既に他界) |
相続人 | 兄弟姉妹4名 |
相続財産 | 数億円 |
相談時の状況は?
自宅の特定居住用宅地等の小規模宅地の特例の適用が論点であった。郊外の宅地であったため自宅の敷地が広かった。子が4人と多かったため、子供部屋を確保するために父が離れを建築した。インターネット検索に強い相続税専門の大手税理士法人に相続税申告書を依頼したところ、その離れは母屋と渡り廊下でつながっていなかったため、離れと母屋は別の家屋である。母屋に居住している父と離れに居住している子は同居親族には該当しない。そのため、自宅の特定居住用宅地等の小規模宅地の特例の適用ができない。という回答であった。
No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
参考サイト(国税庁)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm
相談への対応
自宅の特定居住用宅地等の小規模宅地の特例を適用して相続税申告書を提出しました。
同居と結論付けた理由は次の通りです。
1.前提条件
被相続人が所有する土地の上に、被相続人名義の家屋が2棟(A.B)ある。2棟はそれぞれ固定資産税が課税されており、1~2m離れて建設されており、渡り廊下でもつながっていない。なお、登記簿上はA(平屋/床面積110㎡/S48年築)が母屋として、B(2階建/床面積120㎡/H9年築)がその附属建物とし登記されている。
被相続人は普段はAで生活を行い、相続人(長男・二男)はBで寝起きしているが、Bに風呂とキッチンがないためAに風呂に入りに行き、普段の食事はAで被相続人ととっていた。いわゆるBは子ども部屋とトイレがある家屋になります。
2.考察
この場合、被相続人と相続人は同居していたとして、特定居住用宅地の小規模宅地の特例適用は可能か?
今回のケースで使う条文になります。
租税特別措置法
(小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例)
第六十九条の四
3項第2号イ
イ 当該親族が相続開始の直前において当該宅地等の上に存する当該被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物(当該被相続人、当該被相続人の配偶者又は当該親族の居住の用に供されていた部分として政令で定める部分に限る。)に居住していた者であって、相続開始時から申告期限まで引き続き当該宅地等を有し、かつ、当該建物に居住していること。
一棟の建物とあるので、離れがあるとダメの通説は当然だと思います。
一棟の建物に居住していた者が相続したのか。相続人の長男二男は一棟の建物に居住していた者に該当するのか。
3.居住していた者
全日本不動産協会
https://www.zennichi.or.jp/law_faq/%E5%B1%85%E4%BD%8F%E7%94%A8%E4%B8%8D%E5%8B%95%E7%94%A3%E3%81%AE%E8%AD%B2%E6%B8%A1%E3%81%AB%E4%BF%82%E3%82%8B%E7%89%B9%E4%BE%8B%E3%81%AE%E9%81%A9%E7%94%A8%E8%A6%81%E4%BB%B6%E3%81%A7%E3%81%82%E3%82%8B/
所得税の特例の一つに、10年超所有の居住用の家屋等の譲渡に係る譲渡所得の金額に対する所得税の税率を10%に軽減する「居住用の家屋とその敷地を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例」(租税特別措置法第31条の3)があります。この特例に関して、居住の用に供しているかどうかの判定基準を示す国税庁の通達(租税特別措置法通達31の3-2)が設けられています。
3.2の判定基準による判定の実際
2.の通達における「……日常生活の状況、その家屋への入居目的、その家屋の構造及び設備の状況その他の事情を総合勘案して判定」する場合、具体的にどのような事実に着目されるのか。
そもそも「居住」とは、そこで日常生活を送って起居すること、寝起きすることですから、その家屋がそのために最低限必要な程度の大きさ・設備を備えていることが必要です。2.の通達でも、「その家屋の構造及び設備の状況」が考慮すべき点として言及されています。具体的には、その家屋に、台所、トイレ、浴室、居室ないし寝室が備わっていることが必須となります。
ここでは、総合勘案する際の、設備要件として、具体的には、その家屋に、台所、トイレ、浴室、居室ないし寝室が備わっていることが必須と断言しています。
Bにあてはめると、離れは居住の用に値する家屋ではない。となります。具体的には、離れには、台所、浴室の必須の設備が備わっていません。
それでは、彼らはどこに居住してたのか。生活の本拠はどこなのか。
それは、風呂もキッチンもトイレも備えた居住用家屋、朝晩の食事や家族のだんらんを共にする、母屋に居住していた。そこが、生活の本拠であったという結論を導きました。
あくまで、離れの目的は、母家が居住用家屋の機能として必須の、台所、トイレ、浴室、居室ないし寝室のうち、兄弟が4人もいるので、母家では、寝室の機能を果たすスペースがないので、母家の居住用家屋の機能の補完として、寝室を確保することを目的とした家屋、母家と2つ合わせて一の家屋という解釈です。
母屋に居住していたのならば、相続人の長男二男は父と同じ居住の用に供されていた
一棟の建物に居住していた者
同居の親族
に該当するという結論になります。
故に特定居住用宅地等の小規模宅地の特例が適用できます。
対応による結果
一棟の建物とあるので、離れがあるとダメの通説はありますが根拠はありません。
そもそも自宅の特定居住用宅地等の小規模宅地の特例は、自宅に通常の相続税の税率を課してまともに課税をすると、その相続税の納税資金をねん出するために相続人が居住している自宅を売却しなければならない。という悲劇が生まれないようにするための特例です。法の趣旨を鑑みれば相続人が住むところがなくなるような相続税申告にはなりません。
また、上記見解は税理士からの相談を専門に受ける税理士法人(国税局OBの審理担当官を長年務めた方や国税不服審判所の所長などを歴任されている国税局OBの税理士で構成されている)のうち2つの税理士法人からも上記見解で全く問題ない。とお墨付きをいただいています。このように国税OBの監修を受けることができるのも弊社の強みです。付け加えますと所轄税務署からも何の指摘もありませんでした。
【節税額の詳細】
インターネット検索に強い相続税専門の大手税理士法人 | 笘原拓人税理士事務所の計算 | |
土地 | 40,000千円 | 8,000千円 =40,000千円-40,000千円×80%(小規模宅地の特例の評価減) |
評価の差 | △32,000千円 |
この方の相続税の税率は約20%
△32,000千円×20%=△6,400千円
当事務所にご依頼いただいたことで、△6,400千円の節税!
今回の対応のポイント
弊社は相続税専門チームがあります。また税理士試験の相続税法に合格している税理士有資格者が5名在籍しています。そのため、実務に加えて理論でも強みを持っています。また弊社は相続税専門税理士法人ではなく、法人・個人の顧問先も400以上ございます。法人・個人の顧問は永続的にお付き合いをすることになります。お互いに共に歩みます。相続税の申告書はスポット業務ではありますが、クライアントのその後、将来を考えながら仕事をするクセがついています。流れ作業のようにその人を見ないで仕事をする。ということは私たちにはあり得ません。