相続税の障害者控除

相続人が障害者である場合に受けられる障害者控除という税額控除の制度がございます。所得税の障害者控除は確定申告や年末調整でもしかすると馴染みがあるかもしれませんが、相続税にも障害者控除が存在します。
障害者が相続・遺贈で財産を取得したときに、将来にわたる生活費や介護費用等に備えるため、相続税額から一定金額を控除することで納税額を減額することを趣旨としています。
なお、対象となるのはあくまで財産を取得した相続人であるため、お亡くなりになった被相続人が障害者であった場合には適用されません。 今回はその相続税の障害者控除について適用要件や計算方法などについてご紹介いたします。

適用要件(障害者控除が受けられる人)

 下記の4つの要件を満たしている人は障害者控除を受けることができます。

1.相続・遺贈により財産を取得していること
2.障害者であること
3.法定相続人であること
4.日本国内に住所があること
障害のある方が相続・遺贈により財産を取得していることは特に重要です。 ご両親は障害のある子を心配して生前に多くの預貯金を障害のある子名義で準備しているケースがあります。 そのため、障害のない他の子で財産を活用して欲しい。お金を活用して欲しい。 という思いから障害のある子が敢えて財産を相続しない遺産分割協議書や遺言を作成することがあります。 そうしますと、下記にございますが、障害のない他の兄弟姉妹が扶養義務者である相続税の障害者控除を適用できなくなってしまいます。 少しでもは障害のある子が預金などの財産を相続する必要があります。

 

控除額の計算方法

控除額の計算方法は下記の通りですが、障害の程度と相続人の年齢に応じて控除額が変わってきます。相続人の年齢が若いほど相続後の生活期間が長く大変であることから控除額が大きくなるような仕組みとなっています。適用要件ではありませんが相続人の年齢が満85歳までが控除の対象となっています。したがって、満85歳以上の方は下記算式に当てはめても控除額が算出できませんので控除対象外となります。

①一般障害者(※1)の控除額
満85歳になるまで1年につき10万円が控除されます。
例:相続開始時点で59歳4ヶ月の相続人が一般障害者の場合
(85歳-59歳4ヶ月=25年8ヶ月(1年未満切上)=26年)×10万円=260万円


②特別障害者(※2)の控除額
満85歳になるまでの年数1年につき20万円が控除されます。
例:相続開始時点で63歳9ヶ月の相続人が特別障害者の場合
(85歳-63歳9ヶ月=21歳3ヶ月(1年未満切上)=22年)×20万円=440万円

上記のように、①の場合では260万円、②の場合では440万円もの金額を障害者控除の対象となる相続人の相続税額から控除することができます。

※1一般障害者に該当する方
・身体障害者3~6級
・精神障害者保健福祉手帳2、3級
・療養(愛護)手帳3、4度
・戦傷者手帳第4~第6項症該当者…等

※2特別障害者に該当する方
・身体障害者1、2級 
・精神障害者保健福祉手帳1級
・療養(愛護)手帳1、2度
・戦傷者手帳第1~第3項症該当者
・原爆症認定を受けている方
・成年被後見人の方
・6ヵ月以上寝たきりで介護が必要な方…等

 

控除額が本人の相続税額よりも大きくて全額控除しきれない場合

障害者控除額を障害者本人の相続税額から控除しきれない場合は、その金額をその障害者の扶養義務者の相続税額から控除することができます。扶養義務者とは、配偶者、直系血族、兄弟姉妹、3親等内の同一生計親族等のことをいいます。

例:父が被相続人で、子が相続人で障害者に該当し、子の相続税額が100万円、障害者控除額が260万円の場合
控除しきれない160万円(控除額260万円―相続税額100万円=160万円)は扶養義務者となる母や兄弟姉妹の相続税額から控除することができます。

仮に他の相続人である母や兄弟姉妹に相続税額が発生していない場合又は他の相続人である母や兄弟姉妹の相続税額を本人分より控除しきれない障害者控除額が上回る場合には、使い切れずに残った障害者控除額を次回以降の相続でも一部制限がありますが適用することができます。

 

過去の相続において既に障害者控除の適用を受けている場合

過去の相続で既に障害者控除の適用を受けている場合には、2回目の相続においても適用を受けることができますが、控除額に制限があります。
ただ、過去の相続において既に障害者控除額の全額を控除してしまっている場合には、2回目は障害者控除の適用を受けることができません。
例:1回目の相続の際の相続税額300万円、障害者控除額が260万円の場合
この場合、相続税額300万円>控除額260万円となり、控除額を全額使い切ってしまっており、控除残額がないため、2回目は適用を受けることができません。

一方、控除していない残額がある場合には、その控除残額と2回目の相続時点で計算した障害者控除額と比べて少ない方の金額が相続税額から実際に差し引ける障害者控除額となります。以下の計算例は一般障害者を前提としています。
例:1回目の相続が59歳の時にあり、障害者控除額が260万円、相続税額が100万円で控除額が160万円残ります。

その後、2回目の相続が64歳の時に発生した場合には、下記の計算例のように2回目発生時点で計算された障害者控除額は210万円ですが、1回目で障害者控除を適用しておりその残額が160万円なので、少ない方の160万円が2回目の相続で控除できる金額となります。

【計算例】
1回目の相続 相続開始時の相続人の年齢59歳
障害者控除額 (85歳-59歳)×10万円=260万円
相続税額 100万円
残った控除額 260万円―100万円=160万円

2回目の相続 相続開始時の相続人の年齢64歳
障害者控除額 (85歳-64歳)×10万円=210万円
1回目の相続で残った控除額  160万円
2回目の相続で適用できる障害者控除額 160万円<210万円 ∴160万円

 

控除額が本人の相続税額よりも大きくて全額控除しきれない場合

障害者控除額を障害者本人の相続税額から控除しきれない場合は、その金額をその障害者の扶養義務者の相続税額から控除することができます。扶養義務者とは、配偶者、直系血族、兄弟姉妹、3親等内の同一生計親族等のことをいいます。

例:父が被相続人で、子が相続人で障害者に該当し、子の相続税額が100万円、障害者控除額が260万円の場合
控除しきれない160万円(控除額260万円―相続税額100万円=160万円)は扶養義務者となる母や兄弟姉妹の相続税額から控除することができます。

仮に他の相続人である母や兄弟姉妹に相続税額が発生していない場合又は他の相続人である母や兄弟姉妹の相続税額を本人分より控除しきれない障害者控除額が上回る場合には、使い切れずに残った障害者控除額を次回以降の相続でも一部制限がありますが適用することができます。

 

障害者控除に関する手続き等

・障害者控除の適用によって相続税額が0となる場合には申告不要
障害者控除は、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例のように、申告することが適用の要件となっているわけではないので、もし障害者控除の適用を適用することで相続税額が0になる場合には、相続税申告は不要となります。

・申告方法(申告が必要な場合)
障害者控除の適用を受けるためには、相続税申告書の第6表を作成します。障害者控除は前もって特別な手続きなどの必要はありません。

・必要書類(申告が必要な場合)
1.相続税申告書 第6表『未成年者控除・障害者控除額の計算書』
2.適用要件に該当していることを証明できる書類(障害者手帳のコピーなど)

 

まとめ

今回は相続税の大幅な節税に繋がる可能性のある障害者控除について適用要件や計算方法などについてご紹介してきました。相続人である障害者本人だけではなく、父母、兄弟姉妹などの相続人である扶養義務者の相続税額から控除ができること、控除額が余っている場合2回目以降の相続にも適用できることは大きなポイントです。
障害者控除の適用要件を満たしている方が相続税申告を行う際は、必ず適用漏れのないようにしましょう。もし過去の相続税申告で障害者控除の適用対象であったにもかかわらず、適用を受けずに申告してしまった場合には、更正の請求を行うことで障害者控除分の相続税の還付を受けることができます。更正の請求の期限は相続税の申告期限から5年以内となります。

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