相続税申告書の書き方と提出が必要な書類とは?
投稿日:2022.12.12
相続税申告書の提出は、相続または遺贈などによる財産の取得、および相続時精算課税の適用を受けて贈与により得た財産の合計額が、遺産に係る基礎控除額を超える場合に必要です。相続が発生しても、基礎控除がありますので相続税申告書の提出が求められる人は限られています。また、例えば相続財産の種類が「現預金しかない」場合は、相続税申告書の書き方さえ理解しておけば、自分で申告をすることは可能です。
しかし、不動産など現預金以外の相続財産のある方にご自身で相続税申告書を作成することはおススメできません。そこで、今回の記事では相続税申告書の書き方について解説します。
目次
書き方が分からない!相続税申告書は誰でも提出が必要?
相続税申告書は、誰でも提出が必要というわけではありません。相続税申告書の提出と納税は、遺産の合計額とそれにかかる基礎控除額によって決まります。
相続した財産の課税価格の合計額が基礎控除以下であれば相続税申告は不要です。ただし、配偶者の税額軽減や小規模宅地の特例などの特例を適用して納税額がゼロになった場合、特例適用がなければ本来は課税されるので、適用根拠として提出が求められます。申告要件といいます。
相続税申告を自分でするにはコツがあります。大まかな流れは次の通りです。
1.財産を把握する(プラスの財産・マイナスの財産全てを拾い出す)
2.相続税を計算する(すべての財産に対してどれだけの税金がかかるかを計算する)
3.税額控除・軽減を計算する(誰がいくら納付するか、適用できる税額控除・軽減があるか確認する)
相続税の申告が必要な場合、必ず必要になる申告書と該当すると必要なものがあります。次に、誰でも必要になる申告書の書き方について解説します。
▼詳しくは国税庁ホームページをご覧ください>>相続税の申告のしかた(令和4年分用)
必ず提出しなければならない相続税申告書「第1表・第2表・第11表・第13表・第15表」の書き方
相続税の申告書は第1表から第15表までありますが、相続税申告書の提出が必要な場合、必ず提出しなければならない申告書があります。それは「第1表・第2表・第11表・第13表・第15表」です。
相続税申告書だけではなく、税務の申告書の特徴として、一番初め(第1表)の書類には納付すべき税額が記載され、それ以降(第2表以降)の申告書で1枚目の申告書の税額となる計算の根拠を記載します。
以下で解説する相続税申告書の場合は、まず「第11表・第13表・第15表」を計算し、第1表に記載するのが一連の流れです。
では、第1表をはじめ、それぞれの申告書について1つずつ解説していきます。
第1表の内容と書き方
第1表は「相続税の申告書」です。最も重要で、最終の税額を記載する「完成形」の申告書です。相続人各人の納税額を記載します。税額計算が完了していなくても、以下の通りあらかじめ記載できる部分があります。
- 相続開始日
- 被相続人の氏名・生年月日・住所・所轄税務署
- 相続人の氏名・個人番号(マイナンバー)または法人番号・生年月日・住所・被相続人との続柄
上記の内容は税額計算とは関連がないため、計算完了後に記載する項目が少なく済むように、第1表に先に記載してしておくことをおすすめします。
第2表の内容と書き方
第2表は「相続税の総額の計算書」です。相続税の総額を記載します。
課税価格の合計額は財産の評価の計算が終わった後に決定します。
また、遺産にかかる基礎控除額や相続税の総額は、亡くなった人の一生分の戸籍謄本を収集し法定相続人が確定した後に決定します。
第11表の内容と書き方
第11表は「相続税がかかる財産の明細書」です。相続時精算課税を適用している財産がある場合には、ここに記載する財産から除きます。相続財産に含まれるものは、現金預金のように「プラスの財産」もあれば、借入金やローンの残債のように「マイナスの財産」もあります。「プラスの財産」から「マイナスの財産」を差し引いた金額に対して相続税がかかるため、そのプラスの財産を記載します。もし、分割できていない財産があった場合でも、「一部分割」もしくは「全部未分割」の欄に記載します。
第13表の内容と書き方
第13表は「債務及び葬式費用の明細書」です。相続財産の中でマイナスの財産になるものと、被相続人の葬儀費用を記載します。もし債務を承継する相続人が決まっていなくても記載が必要です。また、葬儀費用は政策的な配慮から、財産の総額から差し引きます。
第15表の内容と書き方
第15表は「相続財産の種類別価額表」です。この申告書は第11表で記載した「プラスの財産」と第13表で記載した「マイナスの財産」と葬儀費用の合計額などを記載し、課税価額を計算します。
相続税申告が必要かも?該当したら提出する申告書
相続税申告の必要がある人の中で「該当すれば提出しなければならない申告書」があります。代表例は次の通りです。
- 第4表(相続税額の加算金額の計算書)
- 第5表(配偶者の税額軽減額の計算書)
- 第6表(未成年者控除額・障害者控除額の計算書)
- 第7表(相次相続控除額の計算書)
- 第9表(生命保険金などの明細書)
- 第10表(退職手当金などの明細書)
- 第11表・11の2表の付表1及び別表(小規模宅地等についての課税価格の計算明細書)
- 第14表「純資産価額に加算される暦年課税分の贈与財産価額及び特定贈与財産価額・出資持分の定めのない法人などに遺贈した財産・特定の公益法人などに遺贈した財産・特定公益信託のために支出した相続財産の明細書」
一見するとあまり関係ないように見えるのですが、相続開始の日からさかのぼって、過去3年以内に被相続人から贈与財産があれば記載するための申告書です。暦年課税分が含まれるため、該当する相続人が多い申告書です。
上記8つの申告書は、あてはまる場合に作成が必要です。ただし、先に述べた誰もが必ず提出する申告書とは異なり、自分で作成するには難しく、専門的知識が必要になる申告書もあります。代表的な申告書は「第11表・11の2表の付表1及び別表(小規模宅地等についての課税価格の計算明細書)」です。
相続税申告書を書くために最低限必要な書類2つ
相続税申告書を自分で記載するために必要な書類は、次にあげる2種類です。
- 被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍謄本
- 遺言書の写し、もしくは遺産分割協議書の写し
戸籍謄本は、相続開始の日から10日経過した日以後に作成されたものが必要です。
また、遺産分割協議書の写しを添付する場合、押印に使用した印鑑は「実印」である必要があり、相続人全員の印鑑証明書も必要となります。
参考>>相続税専門の税理士に遺言書作成を依頼するべき理由とは?
相続税申告書を書くために参考になるウェブサイトは?
相続税申告を自分でするためには、書き方と書類収集がポイントです。どうしても自分で申告したい場合に、参考になるサイトで最もおすすめなのは、国税庁のウェブサイトです。税務署に直接電話や訪問して問い合わせもできるため、直接聞くのも有効な方法です。
しかし、相手は税金のプロであり、質問している側は税務の知識がありません。このような場合は専門家である「税理士」に相談すると、正確な情報を収集できるほか、誤りのない税額計算ができます。
相続税申告は書き方が理解できるかどうかがポイント
現預金だけの相続の場合、相続税申告書の書き方が分かれば自分で申告できる可能性はあります。
しかし、税額控除など自分で判断できない部分がある上、計算した税額が必ず正しいとも限りません。申告書を提出する先は税務署で、内容を精査するのは税務のプロです。正しい税額で申告するためにも、自分で申告が難しいと判断した場合は、専門家である税理士に相談することをおすすめします。
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