生前贈与加算とは?

1.生前贈与加算とは

 

生前贈与加算とは読んで字のごとく、「被相続人の生前3年(税制改正により最大7年。以下同じ)以内に受けた贈与を加算します」ということです。

 

少し専門的に説明すると、被相続人からその相続開始前3年以内に贈与を受けた財産がある場合に、その被相続人の財産として計上して相続税の申告をするということです。

 

わかりやすいように具体例を見ましょう。夫と妻と長男の3人家族がいたとします。2021年4年1日に夫に相続が発生したとします。このケースでは、夫から妻と長男に2018年4月1日以降贈与があった場合にはその贈与がなかったものとされ、夫の財産に計上されるのです。

 

2.生前贈与加算の理由

 

それではなぜこのような法律があるのでしょうか?お客様で実際にあったケースですが、ある人が亡くなる数日前に「このままじゃ相続税がたくさんとられてしまう!」と考え、子供や孫にそれぞれ100万円ずつ、合計で500万円贈与しました。

 

これで相続財産を少しでも減らせたと一同ほっとしたそうです。


しかし、これは少し考えると不公平かもしれません。片や数日前に500万円を贈与した人は、その分相続税が安くなり、片や数日前に何もしなかった人はまるまる相続税が課せられる。たった少しの違いで税額に大きな差が出てします・・・不平等ですね。


そして、こういった行為は相続税の節税対策の側面が強く、贈与税が相続税の補完税である点からすると、そもそもの制度趣旨としても疑問が残ります。

 

そうである以上、国としてもお亡くなりになる3年前までの贈与はなかったことにすることで不公平を是正し、行き過ぎた節税策にストップをかけているのですね。

 

3.生前贈与加算の対象者

 

生前贈与加算の対象者は相続または遺贈により財産を取得した人です。ということは、法定相続人であっても財産を一切貰っていない相続人や、相続人でない孫は生前贈与加算の対象外です。


ですので、「贈与をして節税したい」という場合に、お孫さんといった法定相続人以外の人にも贈与を行うのは意味があります。なぜなら、法定相続人でないお孫さんは生前贈与加算の対象外になるからです。

 

少し応用的な話になりますが、しばしばお孫さんを生命保険の受取人にしている方や遺言書でお孫さんを財産の受取人にされている方がいます。⇒相続専門税理士による遺言書作成について

 

勘の良い方ですと、お気づきかと思いますがこの場合、お孫さんは遺贈によって財産を取得した受遺者(遺言で財産をもらった人)となり生前贈与加算の対象になるのです。

 

また、このようなケースもあります。法定相続人が配偶者と長男、二男だったとして、それぞれが被相続人より亡くなる数日前に100万円ずつ贈与を受けていたとします。遺産分割協議で二男は何も相続しない、と分割協議が成立した場合、二男が受け取った財産は加算対象外になります。


生前贈与加算ひとつ取っても色々な論点がありますね。ご関心がある方は税理士への相談をおすすめします。

 

4.生前贈与加算と相続時精算課税制度

 

生前贈与加算は暦年贈与が対象です。ですので、相続時精算課税制度を利用している場合には、そもそも生前贈与加算の対象外です。相続時精算課税制度についてはまた別の機会にご説明します。

 

⇒暦年贈与についてはこちら

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