2024年8月の記事一覧
障害をお持ちのお子様のいる家庭向けの税金の優遇制度について
本コラムでは、障害をお持ちのお子様のいる家庭に焦点を当て、税金の優遇制度をご紹介していきたいと思います。様々な制度が設けられておりますので税金で損をすることがないように、本コラムをご一読いただけますと幸いです。
本コラムでは国税庁のHPの『障害者と税』に記載されている5つの制度を深堀りしていきます。
所得税の障害者控除
所得税の障害者控除は年末調整や確定申告でもしかするとお馴染みかもしれません。
所得税の障害者控除には障害者控除の対象者の区分に応じて下記の2通りがあります。
(1)障害のあるお子様に一定の収入(所得金額48万円超(ex.給与収入103万円超))がある場合(お子様が扶養に入れない場合)
お子様が障害者であり一定の収入金額がある場合は他の方の扶養に入ることができないため、お子様本人の所得から障害者控除として27万円(特別障害者のときは40万円)が所得金額から差し引かれます。
(2)障害のあるお子様に一定の収入(所得金額48万円(ex.給与収入103万円))以下の場合
同一生計配偶者又は扶養親族(お子様)が障害者のときは、障害者控除として1人当たり27万円(特別障害者のときは1人当たり40万円)が所得金額から差し引かれます。この場合の障害者控除は、例えばお父さんが障害のあるお子様を扶養している場合にお父さん(扶養している方)の所得から障害者控除額を差し引きます。
“控除”には、“所得控除”と“税額控除”がありますが、所得税の障害者控除は前者の所得控除に該当します。所得控除は控除額に税率を乗じた金額が節税金額となります。
例)お父さんの給与収入700万円(給与所得520万円)、障害のあるお子様(一般障害者)を1人扶養している場合 ※所得税率は累進税率のため所得金額により異なります。
障害者控除額270,000円×20%(※所得税率)=54,000円
上記の例では、所得税の障害者控除を適用したことにより所得税が54,000円安くなります。実際には住民税も障害者控除があるので住民税も考慮するともう少し節税額が大きくなります。
なお、障害者控除は、扶養控除の適用がない16歳未満の扶養親族がいる方にも適用されます。
相続税の障害者控除
相続人が障害者である場合に受けられる障害者控除という税額控除の制度もございます。
<相続税の障害者控除>に関するコラムを以前掲載しましたのでこちらをご参照ください。
相続税の障害者控除(参考サイト)
https://www.smart-souzoku.net/column/5081/
心身障害者扶養共済制度に基づく給付金の非課税
心身障害者扶養共済とは、障害者の親亡き後に備えるための公的制度です。
地方公共団体が条例によって実施する心身障害者扶養共済制度に基づいて支給される給付金(脱退一時金を除きます。)については、所得税はかかりません。
掛金全額が所得控除の対象で、節税効果もあります。
この給付金を受ける権利を相続や贈与によって取得したときも、相続税や贈与税はかかりません。
加入に際してメリット、デメリットはあると思いますが、税金に関しては上記のように優遇されております。
障害者扶養共済制度(しょうがい共済) 厚生労働省(参考サイト)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000195619.html
障害者扶養共済制度(しょうがい共済) 独立行政法人 福祉医療機構(参考サイト)
https://www.wam.go.jp/hp/cat/sinsinsyogaihoken/
特定障害者に対する贈与税の非課税
障害者の中でも特定障害者(※)の方の生活費などに充てるための贈与は、特別障害者の場合は6,000万円、特別障害者以外の特定障害者の場合は3,000万円までが非課税とすることができます。
この制度を利用するためには、親などの贈与者を委託者とし、信託会社等に贈与財産を信託し、特定障害者である子を「特定障害者扶養信託契約」の受益者とする信託契約を結ぶ必要があります。贈与された資金は、信託会社や金融機関等が安定的な運用を行い、特定障害者の方の生活費や医療費等に充てる資金として定期的に支払われることになります。この非課税の適用を受けるためには、財産を信託する際に「障害者非課税信託申告書」を、信託会社等を通じて所轄税務署長に提出しなければなりません。
※特定障害者とは、次に掲げる方をいいます。
1 特別障害者
2 特別障害者以外の障害者のうち精神に障害がある方
特別障害者とは
重度の知的障害者
1級の精神障害者保健福祉手帳所有者
1級または2級の身体障害者手帳所有者、、、等
特別障害者以外の障害者のうち精神に障害がある方とは
知的障害者
精神障害者保健福祉手帳所有者、、、等
お子様が特定障害者に該当しなければこの制度は利用できませんが、3,000万円や6,000万円もの金額を信託というかたちではありますが、一度に贈与できるのでお子様のまとまった将来の生活資金等を確保しておくことができます。
一般社団法人信託協会 特定贈与信託(参考サイト)
https://www.shintaku-kyokai.or.jp/products/public_interest/public_interest/specific_gift.html
少額貯蓄の利子等の非課税
障害者手帳等の交付を受けているお子様が受け取る預貯金・公社債の利子等については、非課税の適用を受けることができます。
・障害者等の少額預金の利子所得等の非課税制度(通称、障害者等のマル優)
非課税の対象となる貯蓄は、預貯金、合同運用信託、特定公募公社債等運用投資信託および一定の有価証券です。非課税となるのは、上記4種類の貯蓄の元本の合計額が350万円までの利子です。
・障害者等の少額公債の利子の非課税制度(通称、障害者等の特別マル優)
非課税の対象となる利子は、国債および地方債の額面の合計額が350万円までの利子です。
マル優、特別マル優を利用するには、最初に預け入れ等をする日までに、金融機関の窓口などに「非課税貯蓄申告書」又は「特別非課税貯蓄申告書」を提出するとともに、障害者手帳等を提示して確認を受ける必要があります。
一般的に預貯金等の利率は低いため、利子は少額で、それに対する税金も少額なことが多いですが、非課税措置を受けられるに越したことはないと思いますので、該当する方は是非ご利用ください。
一般社団法人 全国銀行協会(参考サイト)
https://www.zenginkyo.or.jp/article/tag-b/3764/
まとめ
障害者と税にまつわる5つの制度をご紹介しましたがいかがでしたでしょうか。お子様が将来安心して生活を送れるように、できるだけ節税して手元にキャッシュを残す、手元にまとまったキャッシュがある場合は贈与の非課税制度などを利用しお子様の将来の生活資金等を確保しておく、少額の掛金で一生涯の保障を得るために障害者扶養共済制度を利用するなど、ご自身に万が一のことがあった場合に備えておくことは安心につながると思います。
本コラムが皆様の一助になれば幸いです。
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